「へへ。ありがと」


悠香は勉強だってできるし、顔だって女の私から見てもめっちゃかわいい。

それにひきかえ・・・・・・。

後ろを振りかえる。


「なに見てんだよ」


私のうしろの席に座ってるのが、悠香の彼氏の香川浩太。

お調子者で、自称『クラスのムードメーカー』らしいが、さわがしいだけだと思うんだよなぁ。

とても高校2年生には見えない。


「悠香、私になんかあったら言いなよ。コータのこととかさ」


「うるせー。俺がなにしたってんだよ」


悠香は困ったような顔をして笑っている。

ふと、また結城の顔が浮かぶ。

ブンブンと首を振ってそれを消していると、悠香が顔をのぞきこんできた。


「でもさ、琴葉。なんかあったんじゃないの? 最近元気ない気がするんだけどな」


うしろから浩太が、

「琴葉から元気とったら何残るんだよ。珍しい」

とからかってきた。

「うるさい」

浩太をギロッとにらんでから、悠香を見る。

うう……、やっぱりこのモヤモヤを聞いてもらいたい。

「あのさ・・・・・・。実は、この間、“壁ドン”やられたんだよね」