1、

「なんてことしたのよ!」


大きな声が耳元でして、ゆるゆるとそちらに目を向けた。


もうすっかり夜。


さっきまで事情聴取をされていた。

同じ話ばかり何度もくりかえし、担当が変わるとまた同じ話。

ようやく解放されたのは、もう黒色が町を支配したころ。

目の前にはカンカンに怒ったよしこちゃんが。


「あ、よしこちゃん・・・・・・」


「琴葉ちゃん、あなたって子は・・・・・・外に出たらダメ、ってアタシ言ったわよね!」


そう言うと、よしこちゃんはハンカチを目に当てて、地響きのような声をあげて泣き出した。


「うん、ごめんね。でも、でもね・・・・・・」


ダメだ。


言ってるそばから、さっきの光景が思い出されて涙が視界を揺らす。

私がしっかりしていれば、友季子を止められたはず。

無理矢理でも港に行くのを阻止できていれば。

結城との電話を長引かせなければ。



後悔したって遅すぎる。