1、

警察署まで結城に抱えるようにして連れて行かれた私は、小さな部屋に入れられた。

結城がなにか私に言って、そして部屋から出てゆくのをぼんやりと見る。


「・・・さん」


・・・・・・。


「石田さん?」


・・・・・・。


「石田さん」


「は、はい」


反射的に声を出した私は、目の前に座っている人を見た。


「あ、橘さん」


橘は少しホッとしたように笑顔を見せて、そしてすぐに真顔になった。

呼ばれるまで目の前に誰かがいることにも気づかなかった。


「大丈夫ですか?」


「え? 大丈夫って・・・・・・」


なにが?

と、聞き返しそうになって、そこでようやく自分が今警察署にいることを思いだした。

同時に、さっきの寺田の顔が思い浮かぶ。


だめだ。