眺めていた。
飽きるほど、
穴が開けばいいと思いながら
眺め続けていた。
いったい、いつからだろう。
掌に傷がついたのは。
いったい、いつからだろう。
こうやって眺めているのは。
すると、誰かが
ふとそれに気付いて
こう云った。
『掌に傷があるのは、何かを守った証拠さ。あったんだろ?守りたい何かが』
ああ、そうなのか。
そうだったのか。
何かを守った証。
守りたかった何か。
はて。
俺はいったい、
何を守り、何を守りたかったのか。
今となっては
判りもしない。
ただ……、
掌の傷だけが知っているようで。
今日もまた、
眺め続けているだけだ。
いつか、この傷も
守りたかった何かのように消えてなくなるのだろうかと。
忘れてしまうのだろうかと。
今日もまた、
眺め続けている。