そこには風が吹いていた 爽やかな風と夏の始まりの匂い さらわれるのは伸びた前髪と煮えたぎる音 腹の中にいるそいつは気付いたのだろうか この風と この匂い 憎しみという名のそいつには…… 気付けたのだろうか 真っ白な悲鳴のような光に ようやく目が慣れた時 もう 声は聞こえなかった