憑代の柩

 少しの間の後、八代は振り返り言った。

「妹のことを調べたければ、自分で調べろと言っただけだ」

『だったら私を雇って。

 いいえ。
 雇ってください、八代先生――』

 何も言わなかったが、いつの間にか、鍵は解除されていた。

「行かなくていいのか?」
「え?」

「衛とも要とも行かなくていいのか」

 助手席に座ると、バックミラーに教会の階段のところから、こちらを見ている衛の姿が見えた。

「咲田馨はもう死んだんですよ」

 そう言い、ちょっと笑って見せる。

「先生、今度、適当な戸籍買ってくださいよ」
と言うと、また、ロクでもないこと言い出したという目で、ミラー越しに八代は、こちらを見た。

「ほんとにいいのか?」

「しつこいですよ。

 自分の発言には責任を持ってくださいよ。

 私、探偵になって、自立できるまで、先生から離れませんから」

 ようやくエンジンがかかり、車が走り出す。

 遠ざかる教会。

 衛の姿も遠くなる。