憑代の柩

「確かに、私はきっかけが欲しかっただけです。

 衛に取られる前に、馨を殺すきっかけを」

 まったく、と要は嗤う。

「あんなに長い間かけて、罠を張って、手に入れたのに。

 首を絞めるとか、生温かったですね。

 どうしても、手加減してしまう。

 でも、毒薬とかも難しかったでしょうね。

 馨の苦しむ姿を見たら、反射的に吐き出させていたでしょう。

 医者の性ですね」

 奏は―― と要は、そこで、ふと気づいたように言った。

「毒薬を手に入れたものの、それで殺した男の死んでなお、苦しむ姿を見て、嫌気がさしたのかも。

 だから、あづさの作った爆弾を利用した。

 それだと、ただ、待つだけでいい。

 その時が来るのを。

 自ら薬を飲み干す勇気が彼女にはもうなかったんでしょうね」

 誰もが卑怯だ、と要は締めくくる。

 卑怯か。

 そうかな? と思いながら私は聞いていた。