憑代の柩

 衛は少し迷ったあとで、その先を口にする。

「要と一緒にうちに来てて、父親に気に入られたんだ。

 彼女には当時、借金があって、それで僕の家庭教師を引き受けたようだった」

「家庭教師って、そんなに儲かるものなんですか?」

 そこで何故か衛は黙る。

「麻紀さん、家庭教師だって、知らなかったんですか?」

 麻紀の代わりに衛が答える。

「あの頃、お前は何を拗ねてたのか、うちには近寄らなくなってたから知らなかったんだろう」

「何をって」
と麻紀は絶句する。

 もしや、この男……。

 告白されたことにも気づいてなかったのでは。

 立ち尽くす麻紀を見、哀れ過ぎる……と思った。

 衛は全員を無視するように、新しく手に取ったファイルを捲る。

「あの、要先生の婚約者だって言うのなら、なんで、あづささんは、この顔をコピーしたんでしょう」

 本田が軽く肘でつく。

 ああ、そうか、と思った。 

 衛はその要の婚約者が好きだったのだ。

 本気で見ているように見えなかったファイルを閉じて、彼は言う。

「彼女が川から上がったのを見たという証言もあった」

「え――」