会おうと思えばその方法はいくらでもあったはずだ。
家を訪ねることだって出来たのに、結局出来なかった自分が情けない。
曖昧な謝り方で俺の心情を悟ったのか、紗衣はクスリと笑った。
そして言う。
「私、祖母の家でしばらく暮らすことにしたの」
「……おばあさんの?」
「あの橋にいたら祖母の家を思い出して。田舎だけど、自然が豊かなとても静かでいいところなの。色々あったし、のんびり向こうで暮らしたいな……って」
紗衣の顔は穏やかだった。
この1週間で、紗衣はそんな決断を……?
うじうじ考えるだけで過ぎて行った俺の1週間。
ケタはずれにも近い過ごし方をして来た1週間に、さっきから俺は戸惑ってばかり。
紗衣は、その穏やかな顔を向けたまま言った。
「だから解消しよう?私と耀くんの関係」
"別れよう"じゃない。
……解消。