「家の人、知ってるの?」
「母に送って来てもらったから大丈夫」
指さす方を見ると、路地の隅に1台の車がハザードを出したまま停まっていた。
あんな騒ぎの後だ。
そりゃ、心配してるよな。
向こうから見えているか分からないが、そこに軽く頭を下げた。
中へ入るよう言ったが、外がいいと言う彼女を連れてきたのは近くの小さな公園。
まだ外灯がつくには明るくて、子供達が数人ボールを蹴りあっている。
「ごめんなさい。いろいろ忙しくて連絡出来なかったの」
ベンチへ座ると、俺の着信を無視したことを謝ってきた。
あの日とは違う凛々しい紗衣の姿に、俺の方が戸惑った。
「いや……俺の方こそ…なんか……ごめん」