そんなことを言う資格がないのは分かってる。

分かった風だっていうのは、分かってる。


けど。




「全部流したら、明日はきっとちゃんと笑えるから……」




あたしは凛ちゃんに、何もしてあげられなかった。


だから、せめてこのくらい……。



「ほら……」

「…………」

「誰も見てないから」

「……ゴメン、今だけ……」



深く顔を埋めた凛ちゃんの顔を隠すように、腕でそっと包む。


いつもは気丈な凛ちゃんの頭を、優しく撫でた。





初めて見た凛ちゃんの涙。

でも、これは弱さじゃない。

頑張った強さの証。

頑張った人だけが流せる涙。





恋って、つらいね。



誰かが幸せだと、誰かがどこかで泣いている。



みんなが幸せになれる恋があればいいのに……。