「紗衣の家に行ってくる!」



電話を切って、紗衣の家まで自転車を飛ばした。


高校生の8時という時間は決して遅くない。

昼間のことがなかったら、こんな胸騒ぎなんてしなかっただろう。



家の外では、母親がなす術もないように行ったり来たりを繰り返していた。



「耀太君っ……!」



血相を変えた母親は俺を見つけるなり、駆け寄って問い詰めた。



「一緒じゃないの?ねぇ、紗衣は?紗衣は!?」

「あのっ……」



取り乱す母親を落ち着かせようと、両腕に手を伸ばすと



「あなた、あの子に何かしたのっ!?」



その手を振りはらわれた。



「えっ……」

「最近、紗衣の様子がおかしかったから注意はしてたのよ。夜もあまり眠れていないみたいだったわ……」



母親は伏し目がちに顔を歪ませた。