苦しいよ……苦しいよ、耀くん……。
だからこれ以上呼ばないで。
気持ちが揺らいで、その唇を受け入れてしまいそうになるから。
「まひ」
「……っ」
何度呼ばれても、気持ちを抑えて目をそむけ続ける。
「まひ……」
「………」
「まひ……俺、まひのことが……」
「耀くんダメっ……」
弾かれたように顔を上げると、見たこともないような切なげに揺れる瞳があたしを見つめていた。
「………まひ……」
例え、耀くんがあたしと同じ想いでいてくれたとしても。
もう、ダメなんだよ……。
あたし達のあいだに、"好き"という言葉は交わせない。
言っちゃいけない。
広瀬さんを裏切れない……。
耀くんに、裏切らせちゃいけない……。
涙は堪えた。
あたしが泣いたら、あたしの気持ちを知られちゃうから。
グッと力を入れたあたしとは対照的に
耀くんの目は弱く、ものすごくあたしを求めてる様に見えた。



