体中から出てくるのは汗しかない。
緊張と……罪悪感で。
「耀くん、キスして」
気がつくと、広瀬さんの顔が間近にあった。
その距離で瞳を閉じている。
「えっ……?」
「ねぇ、早く」
「広瀬……さん?」
「だから"紗衣"だってば」
そう言って目を開け少し口を尖らせると、
「ごめん。ちょっと意地悪だったかな」
顔を遠ざけて、紅茶の入ったカップに口をつけた。
さっきから俺は。
この瞳に、翻弄されている。
俺は、どうしたら……。
「急ぐことないよね」
「…………」
「私たち、まだ出会ったばかりだもの」
「…………」
カップに視線を落したまま広瀬さんが呟いた。
口元は柔らかく弧を描いている。
───ドクン。
「でもね」
広瀬さんは自分の手を、右の胸元へ運んでいく。
ドクッドクッ……。
早くなる鼓動。
「……痛いの……ここが」
「…………」
「耀くん、触れて」
そう言って彼女はゆっくり制服のボタンを外し、胸元を広げた。



