「母さんゴメン……」
痛みの残る腕を、母さんの背中へ伸ばした。
大会に出れなかったことよりも、深く心が痛んだ。
本当に、自分がハイジャンに対して無欲だったことを知る。
無念な想いがあるとすれば……。
大会に出場できなかったことより、
まひに交わした約束を果たせなかったことだ。
ようやく、俺の飛ぶ意味を見つけたっていうのに……。
少し落ち着きを取り戻した頃、親父が事故の詳細を告げた。
「覚えていないかもしれないが、耀太は不破鉄鋼に突っ込んだんだ」
「不破鉄鋼!?」
ゾッとした。
「俺の体……どーなってんの……」
とにかくあちこち痛くて自由が利かない。
あんなとこに突っ込んだら、神経の1本くらいイカレちまっても不思議じゃない。
正直、俺はビビってた。
だから無理して笑顔を作って聞いた。
「骨折しているが問題ない。今回は残念だったが、しっかりリハビリすればすぐに跳べるようになるさ」
「…………」
「深い傷がなかっただけ奇跡だ。耀太は不死身だな」
「…………」
心底ホッとした。
作り笑顔も消え、安堵の溜息を洩らす。
全治1ヶ月。
世間で言うところでの重症。
そこから長い、俺の入院生活が始まった。