本多先生は驚いたような声をあげた。
「あの……耀太君の事故は……」
けれどすぐに、耀くんの容体と事故の経緯について尋ねた。
おじさんは厳しい顔を崩さない。
そして、あたしの肩に手を置いたまま重そうに口を開いた。
「……目撃者の話では、自転車に乗っていた耀太が、突然出て来た車を避けようとして、急ハンドルを切ったようです」
「……と言いますと、車にはねられたわけじゃっ……」
「……はい……いわゆる自損事故です……」
本多先生と千夏先輩が、軽く息をついたのが分かった。
……もちろんあたしも。
車との接触でじゃないなら……
そんなに大きな事故じゃ……
「しかし、耀太は相当なスピードを出していたようで……」
ビュンビュンと風を切った、耀くんの後ろ。
なぜか、その時に見た流れる景色を思い出していた。
「耀太が突っこんだ場所というのが……」
気持ち良かった、耀くんの後ろ。
「あの……不破(フワ)鉄鋼だったんです」



