「あたしね……去年、耀くんが跳んでるところ、見たの」

「……去年?」



不思議なことを言うまひに、首を捻った。


去年、俺はハイジャンなんて跳んでない。

短距離に転向し、ただがむしゃらに走っていただけ。



「入学したばっかりの頃。放課後、誰もいないグラウンドで。

空に溶けてくあの飛躍。綺麗で、見惚れた……。

それからずっと忘れられなかった。誰だかわからなかったけど、いつも探してた」

「…………」

「そして、今年の春、もう一度見つけた。

それが……耀くんだったの……」

「…………」



入学したての頃。

これで封印すると決めた、最後の跳躍。


それを、まひが。



……見てた……?



───ドクンッ……。


期待にも似た感情が、胸を叩いた。



「内緒な……って言ったの、耀くんだよね」

「……っ!」



嘘かと思った。


暗くて、相手の顔は分からなくて。

でも、未練がましく跳んだことを知られたくなくて。


あのとき俺は言ったんだ。