「部活前の忙しい時にごめんね?」
申し訳なさそうにまひが言った。
「大丈夫」
さらっと言って感情を隠す。
それにしても、さっき教室で手を振ったばかりなのになんだ?
「えっと……」
少し躊躇ったあと、まひは後ろで組んでいた手をパッと前に差し出した。
俺の顔を見ず、俯き加減に。
「……り……」
「え?なに?」
声が小さくて聞きとれない。
つーか、グラウンドの声がうるさくて。
まひの言葉を拾おうと、俺は一歩前へ出る。
「あの……あの……」
口ごもっているまひの手には、小さな紙袋。
差し出されたんだから受け取っていいのだろうと、それに手を伸ばすと「あっ」とまひが声を漏らした。
……ん?
取ったら駄目なのか?
だからその手をひっこめたけど、
「耀くんにあげる!」
今度は押しつけるように、無理矢理俺の手に乗せた。