「優飛ってのは、俺がハイジャンを初めて見た時の印象そのまま。そして俺の願望。
そんな風に跳びたいっていう。親父達もいい名前だって、賛成してくれて……。
でも……」
耀くんの顔が曇る。
「1回ハイジャンやめて……優飛に、そんな安易な名前つけた自分が許せなかった。
結局そんな程度だったくせに、妹には一生背負わせるような名前つけたこと」
「……っ」
今、耀くんは、あの場面に巻き戻っている。
思い出したくない、過去に……。
その時の耀くんを知らないあたし。
手のひらには、ジワリと汗が浮かんだ。
「……名前が呼べなくなった。
……顔が見れなくなった。
優飛を見ると、思い出すから……」
耳を済まさないと聞き逃してしまうほど、小さく放った最後の言葉に、居たたまれなくなる。
「……すごく好きだったから
……跳ぶことが」
大好きなものを手離した辛さ。
どれだけ、耀くんは苦しんだんだろう。



