……もしかしたら、あたしの所に来たわけじゃないのかもしれない。


そうだよ。きっとそうだよ。


胸が高鳴った自分が恥ずかしい。


そんな顔を隠すようにして、通り過ぎようとすると。


「おいっ」


横から手を引っ張られた。


「なんで無視すんだよっ」


それは和希くん。


「え……だって……」


「気付いてるならこっち来いよ」


「……あたしじゃないと思って……」


「は?若菜じゃなくて、こんなとこ来ねえよっ」


「……っ……」


ぶっきらぼうに放った言葉は、あたしの体温を上昇させるのなんて容易くて。