(……蓮司とでさえ、こんな風なのに) 今日何度目かもわからない溜息を吐き出した私は、駅に向かって一人、俯きながら歩いていた。 夏服のスカートが、ゆらりと風に靡く(なびく)。 憂鬱な心の理由。 その一つである蓮司との事以上に、私の心に重くのしかかるのは、もう一人の存在だった。 (樹生先輩、あれから大丈夫かな……) 先輩の過去を聞き、初めて先輩の心の傷を知ったあの日。 偉そうに先輩に対して意見と憶測をぶつけたあの日を境に…… 私は先輩とも、一度も話をしていなかった。