この星を見上げたら、僕はキミの幸せを願う。


「駅で結月が定期を落とした時に拾って渡した事があるんだ」

「そうなの?いつ?」

「先月かな」


首をひねって考えてみるけれど、全く思い出せない。

先月はお父さんが再婚したという事後報告があったショックのせいか、あまり記憶がないんだ。


「覚えてないの?その日、かなり雨風がひどかったんだけど」

「うーん……?」


リツに言われても定期を拾ってもらった光景が浮かんでこない。

雨風が強かった日があったのは確かなんだけど。

街中がかなり水没して、車が通れない場所があったり、交通マヒになったくらい。

タクシーも走ることができないくらいで、駅前のバス停には長蛇の列ができていた。

駅から徒歩圏内に住んでいて本当に良かったってホッとしたのを今思い出した。

でも、リツに定期を拾ってもらったのは思い出せない。


「定期を渡した時、結月は死んだような目をしてたよ」

「私が……?」


自分の目を指さしながら話すリツ。