おかしいところがないかチェックがてら、髪をブラシでとかす。

サラサラとしたロングヘアはお母さんゆずりで、私も気に入っている。

お父さんに似ていたら、くせっ毛がひどくなっていたと思うし、似なくてよかった。

カバンを肩にかけて部屋を出ると、ちょうどえみりが隣の部屋からパジャマ姿で出て来たところだった。

目が合うと、えみりがギロッとにらんでくる。


「あーあ、朝から嫌なもん見ちゃった」

「そんなのお互いさまなんだけど」


意地悪そうに笑みを浮かべてヘラヘラしながら言ったので、私はピシャリと返した。

えみりは口を突き出して、ふてくされたような顔をする。


「朝から何してんだ?」

「お父さん、おはようーっ!」


下からお父さんの声が飛んできて、えみりはパッと表情を変えると階段を駆け下りてお父さんの元へと行く。

花が咲いたような笑顔で、お父さんお父さんってまとわりついているのを見て、私はフンと鼻を鳴らしてしまった。