いい年して夢見がちな事をまだ言っている……。


「とりあえず、今日は帰った方がいいと思うよ。バカは風邪ひかないっていうのは迷信だし、リツ今にも倒れそうなくらい顔面蒼白だよ?」

「顔色悪いのは元から。オレ、日中は引きこもるタイプで夜になったら活動すんの」

「夜行性って事?」

「そんなもんかな」


さすがに学ラン着てそれはないでしょ。

私をからかっているだけなんだと思う事にして、とにかくリツをジャングルジムから下ろそうと腕をつかんだ。

ところが思った以上にリツの腕が細くて、私はギョッとしてしまった。


「ほっそ!リツ、ちゃんと食べてんの?ダイエットとか女子みたいな事言うんじゃないでしょうね?」

「言わないけど食が細いから仕方ないだろ?心配すんな。オレはまだ死なないから」

「誰も死ぬような心配はしてないけど」


本当にそう。

食べなきゃぶっ倒れるよって言いたかっただけなのに。

そんな私を見て、リツはただ可笑しそうに笑うだけだった。



雨はいつの間にかやんでいて、雲の切れ間から薄く光が差し始めている。

リツと出会った事で、暗く何も見えなかった私の世界にも少しずつ光が差し始めた気がした……。