ポタポタと髪を伝って雫が垂れていく。
それに気が付いたリツは傘を私に戻した。
「オレはバカだから風邪とは無縁だけど、結月は頭いいから風邪ひくだろ」
「別に頭いいわけじゃないよ?」
そう答えると、リツは私の制服を指さす。
「それ県立中央高校の制服だろ?県で一番頭のいいとこ」
「……でも私、風邪ひくほどヤワじゃないから」
「言われてみればそんな感じだな」
リツに言われて、私は笑ってしまった。
不思議と前からの友達みたいな感覚で、思っている事をポンポン言えてしまう。
気兼ねなくいられるのは、高校に入ってから初めてかも。
波風立てたくなくて、いつも適当に流れに乗って毎日を過ごして来たから。
「……明日は晴れるといいな」
「星が見たいから?」
空を見上げてつぶやいたリツに問いかけると、彼は私の方を向く。
「もちろん。願うが叶うまでずっと願い続ける」
顔色が悪いくせに、満面の笑みを浮かべて言ったリツはキラキラと輝いて見えた。