「今さしたところで、あんまり変わらないけどな」
意外にも水色の花柄の傘が似合う目の前の彼。
思わずフフッと笑ってしまうと、彼がこちらを見た。
「人の顔見て笑うなんて失礼じゃね?」
「だって、その傘アンタに似合ってるんだもん」
私が言うと彼は傘をチラッと見上げて、視線をすぐに私の方に戻す。
「言われてみれば、お前よりオレの方が似合ってるかもな」
「何それ、すごく失礼じゃない?」
プッと頬をふくらませて怒ると、彼はおかしそうに笑い声をあげた。
「おーおーお。怖い顔すんな。……お前、名前は?」
「……藤村結月。アンタは?」
「リツ」
私はフルネームを名乗ったのに、彼……リツは名前だけ。
そんな風に名乗られるとホストみたい。