「タオル返さなくていいから。じゃあね」
「あ、ちょっと待ってよ。それじゃ助けられてばかりで悪いからおごるよ」
自販機を指さして川上君はそう言った。
おそらく貸し借りはナシにしたいのだろうと思う。
私は首を横に振った。
「別に貸しにするつもりないし。その代わり今後一切、私に構わないでくれたらそれでいい」
「いや、でも……」
「じゃあね」
納得のいかない表情の川上君を置き去りにして、私はさっさと改札口を通り抜けた。
できれば二度と関わらないで欲しいと願いながら。
同じ方向の電車に乗れば、降りる駅も一緒だろうからそれもまた嫌だし。
滑らないように注意しながら階段を下り、ちょうどホームに入って来た電車へと乗り込む。
かなり中に染み込んだせいか、歩くたびにローファーから水がにじみ出てくる。
席は空いていたけれど、スカートが濡れているから座る気にもならなかった。



