傘をさして、上半身は守られるけれど足元はグショグショだった。
ローファーの中に水が入って、靴下も濡れていて気持ちが悪い。
……お母さんが死んだ日もたたきつけるような雨の日だった。
危険な状態だと医者から告げられて、お父さんのスマホに何度も何度も電話をしても、全く繋がらない状態で。
時折、雷鳴がとどろく中ひとりで私はお母さんの亡骸にしがみついて泣いていた。
どんなに心細かったか、きっとお父さんにはわからないし、理解もして欲しくない。
「助かったよ。急いでたとはいえ強引に入り込んでごめん。本当にありがとう」
駅に着いて、川上君は悪天候を吹き飛ばすかのように爽やかな笑顔でそう言った。
傘をたたんで雫を払った後、私は彼にハンドタオルを差し出す。
「……肩濡れてる」
「え?……あー、本当だ。ありがとう」
ハンドタオルを受け取って肩をぬぐう川上君。



