私もあの日からここに来ていないから、彼がいない事に対して不満は言えない。
彼が言ってくれた言葉が、私にとっては最後の砦。
ここに来た時に彼がいなかったら、どれだけ絶望するのか想像したら怖くて来られないんだ。
私が来た時に彼の姿がなかったとしても、あの日私が急いで帰った後に警察に補導されて家から出られなくなったのかもしれないし、今日は体調を崩して家にいるのかもしれない。
そんな風に物事を先回りして、都合がいいように理由づけているほど。
やっと見つけた居場所をなくさないために必死になっている自分が少し情けなくて笑えてくる。
「もう行かないと……」
スマホで時間を確認して、最後にジャングルジムの上に目を向けた。
彼の姿がない状態が本来の姿だというのに、なぜか寂しく見えるジャングルジム。
たとえ子どもが遊んでいたとしても、そんな風にしか見えなかっただろうね。