受験生は大変だなと思いながら、スルーして部屋に入った。

ドアを閉めると、ろう下の壁を殴る音が聞こえる。

私に無視された事が気に入らないのだろう。

無視されると気に入らないし、言い返されても腹がたつ……。

えみりの思考回路は全く理解できないし、したくもない。


「……あーあ」


亀裂が入って割れてしまった写真たてはそのまま床に散乱していた。

持っていた写真を机の上に置き、壊れた写真たてのパーツを拾い集める。

細かい部分は仕方がないけれど、割れずに残った大きなパーツを接着剤でくっつければまた使えるようになるだろう。

これだけは壊れても捨てる事はできない。


「ごめんね、お母さん……」


服が当たったくらいで倒れると思っていなかった私も悪いんだと思う。

引き出しから接着剤を取り出し、謝罪の言葉を繰り返しながら、写真たての修復作業をしていった。