「……別にそういうわけじゃないけど」
「もったいねーよ。せっかくこんなに星が綺麗だっていうのに、下ばかり向いてさ」
彼は星空を指さして笑った。
表情が見えないから声のトーンで判断しただけ。
バカバカしいと思いながらも、つられて彼の指さした方を向いてしまった。
夜の空に散らばる無数の星は、小さいのにどれもキラキラと輝いていて自分はここだと存在をアピールしているようにも見えた。
「夢見たっていいじゃん。ほんの一瞬でも現実逃避できるなら」
「けど……っ!」
私はあの小さな星のように輝く事なんかできない。
一瞬で燃え尽きるようなチリでさえ、流れ星としてみんなから注目される存在であるというのに。
気が遠くなるような暗闇の中で、ほんの一瞬だけ現実から目をそらして何になるというの?



