お父さんが私を大学に入れたいと言っていたのは、世間体を気にしてという事ではなかった。
自分の進路を選ぶ自由がある上、学びたい分野を自由に選べるという事もできると言いたかったらしい。
意固地になって、自立という意思を貫こうとして私は頑として話を聞く事をしなかった。
お父さんの想いを理解したうえで、私はひとつ提案をしたのだ。
「大学へ進学するが、家を出てひとり暮らしというのが希望だと言っていたが……」
「はい」
先生の問いかけに即答する。
大学へは進学する。
けれど同時に自立をしたいので、ひとり暮らしがしたいと希望したのだ。
決してあの家が嫌という理由で出たいというわけではなく、自分が生きる世界の広さをこの目で見たくなったんだ。
私は狭い世界の中で生きて来たと思う。
だから視野を広げて、色々な経験をしてみたくなったんだ。
それはリツと出会って、色々な人の想いを違う角度から見て知る事ができたから。



