私もお母さんが亡くなるまでは、母子家庭みたいなもので二人で食事の準備をしていたから、懐かしいものを感じる。
「恵茉、今日は購買なの?珍しいじゃん」
購買でパンを無事に買い終えると、恵茉に声をかけてきたのは隣のクラスのナオだった。
ナオは恵茉と同じバスケ部に所属していて、私とは去年同じクラスだった。
「寝坊して作れなかったから。結月、ちょっと待ってて。飲み物買ってくる」
恵茉はそう言って体育館脇の自動販売機の方へと行ってしまった。
「ナオも購買なんて珍しいね。去年はほとんどお弁当だったよね?」
「それがさ、聞いてよ!実は昨日、お母さんとケンカしちゃってさ。腹が立ったからお弁当いらないからって言っちゃったんだよね」
何気なく聞いてみたら、ナオは深いため息をつきながら答えた。
お母さんとケンカして……。
ナオの言葉がチクリと胸に刺さる。
「……そっか」
「いらないって勢いで言ったけど、本当に作ってくれないとは思わなかった。薄情だと思わない?結月のお母さんもそんな時ある?」
ナオは怒りがおさまらない様子で、口をとがらせながら愚痴る。
私のお母さんが亡くなっている事、ナオは知らないのだろう。
私はハアッとため息をついた。
ナオの言い分があまりに贅沢すぎて、返す言葉が見つからない。