血が繋がった兄弟なんだからそれでいい……。

川上君の言いたい事はわかる。

だけど、川上君の気持ちをリツはきっと知らない。


「……リツは川上君のその気持ち、知らないよ」


エレベーターのドアが開き、先に乗り込んだ川上君の後に続いて私も乗り込む。

5階のボタンを押した後、彼はエレベーターの閉ボタンを押し、ドアが閉まる。


「知らないだろうな。言ってねーから」

「リツ、言ってたよ……。自分がいない方がいいんじゃないかって」


ポーンという音が鳴り、5階に到着した。

無言のまま先に川上君がおりて、私はその後に続く。

507号室と書かれた部屋の前で足を止めた川上君。

プレートには『川上律』と書かれている。


「いない方がいいなんて……そんなわけねーだろ」


震える声でそう言って、川上君は静かに扉に手をかけた。