「さ、えみり。あなたも挨拶しなさい」
「えみりです。中学3年生です。どうぞよろしくお願いします」
女の人の隣にいた子は、えみりと名乗った。
礼儀正しく頭まで下げて。
ふわふわとした巻き毛にパッチリとした目。
顔立ちもハッキリとしているし、細身で背も高いから自分の事を可愛いと思っているんだろうなぁ。
……どうでもいい事だけどね。
私は何も言わずに、2階の自分の部屋へと戻る。
パタンとドアを閉めると、ため息がもれた。
棚の上の写真たてを思わず見てしまう。
お母さんと私の2ショット写真。
……何で、私だけ残して死んじゃったの?
私も連れて行ってくれたらよかったのに……。
お母さんは体が丈夫な方ではなかったらしい。
でも、私に心配をかけないよう、いつも笑顔だった。
お父さんは仕事が忙しく、ほとんど家にいない印象しかない。
私の誕生日もクリスマスも、お正月も。
いつもお母さんと2人で過ごしていたけれど、私はそれでも幸せだったんだ。
そんなある日の事だった……。
突然倒れて、お母さんはそのまま帰らぬ人となった。