お姉ちゃんと呼びたかったはずなのに、何で名前を呼び捨てにしているのか……。


「ノックしなよ」

「はいはい。これでいい?」


生意気なところは相変わらず。

私が指摘するとめんどくさそうにえみりはドアをトントンと叩いた。

もう部屋の中にいるのだから、今さらやったところで何の意味もない。


「……で、何だっけ?」

「だから……。お父さんに聞いたけど、データを渡したんだって?」

「うん。警察に行って相談するって言ってたから」


椅子の背もたれに寄りかかると、ギイッと音が鳴った。

昨日、病院から帰ってきてスマホを確認したら、水たまりに落ちたにも関わらず何とかデータは生きていた。

だからSDカードにデータを移して、お父さんに渡しておいた。

動画を確認したらしく、さっき顔を合わせたらかなり不機嫌そうな顔だったから、ブチ切れ寸前に違いない。