仲がよくて、あたたかい笑い声が響く家庭。
絵に描いたような理想の家族像に見えるんだろう……。
ふたを開けてみれば、そんなものには程遠いというのに。
そう思っているのは私だけかもしれないけれど。
これ以上、会話が聞こえてこないように私はイヤホンを耳に入れた。
再生ボタンを押して、音量を上げる。
軽快なリズムが流れるけれど、気持ちまでは明るくなれない。
何度目かのため息をついた時、さっき放り投げたスクバが視界に飛び込んでくる。
あの中には、乱暴に突っ込まれた進路調査票が入っている。
恵茉に聞かれた時、何となく進路は決まっていると答えた私。