「……何か、上から目線で言われてるからヤダ」

「何それ」


えみりがプッと頬をふくらませてそっぽを向いて、出口の方へと先に行ってしまった。

その後ろ姿を見ながら、変な子だなと思いフッと笑みがこぼれてしまう。

彼女の後を追うようにロビーへ行くと、ソファに座っていた川上君がスッと立ち上がったのが見えた。

もしかして私を追いかけて来たの……?

公園はすぐそこだし、彼は何かを言いかけた。


『リツって、もしかして……』


川上君の言葉が頭の中で再生されて、私の手から傘が落ちた。

その先を聞くのがかなり怖いと思ったからだ。

リツの正体を知りたくないと言ったらウソになる。

でも、今の私があるのはリツのおかげであって、正体を知ってしまったらすべてが消えてなくなりそうな気がして怖かった。

だから、何も言わないで……。