「じゃあ、父さんは車を回してくるから」
そう言ってお父さんは待合室を離れていく。
私とえみりのふたりきりになると、変に沈黙が重く感じた。
ここにいてももう用はないし、出口に行こうとした時えみりが立ち上がる。
「ゆ、結月……」
「……ん?」
振り返ると、えみりは緊張した面持ちで私を見つめている。
スカートの裾をギュッと握りしめて。
「私、本当は結月の事ずっと、お姉ちゃんって呼びたかったんだよ……」
その言葉で、さっきえみりが何かを言いかけていた事が頭によぎった。
お父さんが乱入してきたせいで聞く事ができなかったけれど、えみりはそれを言いたかったのだと納得した。
「……これから、そう呼んでもいいけど?」
こういう時ってどんな顔をすればいいんだろう?
今までひとりっこで生きてきたから、『お姉ちゃん』と呼ばれるのには少し抵抗がある。
でも、嫌な気は全然ない。



