「藤村、無茶するなよ!」
傘を持って、飛び降りた私の元に駆け寄って来た川上君。
だけど、川上君に構っている場合ではない。
私はクルッとリツの方を振り返った。
「リツ、ありがとう……!」
「礼なんていい。早く行って来いよ」
リツの笑顔で私はまた強く背中を押された。
礼なんていいって言うけれど、何度言っても物足りないよ。
リツがいなければきっと何も行動を起こせずにいたままだったから……。
「藤村……今、リツって言ったよな?」
「えっ?」
さっき飛んだ私の傘を差しだして、そう川上君は問いかけて来た。
彼の表情はすごく硬い。
「リツって、もしかして……」
「結月!早く行け!」
リツの怒鳴り声にハッとして、私は川上君から傘を奪い取るように受け取り、病院に向かって走り出す。
川上君が何を言いたかったのか、いつもは温厚なリツがなぜ怒鳴ったのか……。
わからない事だらけだけど、今は病院に行く事の方が大事だった。
お父さんがあんな悲痛な声で私に来てくれって言うなんて、えみりの状態が悪いとしか思えない。
行ったとしても私ができる事なんて何もないのに……?



