たたんだ洗濯物をグシャグシャにされたり、お風呂の湯を落とされたり。
傘を壊されたり靴を隠されたりしたこともあった。
幸い、部屋の中を荒らされた事はないけれど、もしかしたら、今までも友達にこんな事をしていたのかもしれない。
だけど、私は何も感じなかった。
お母さんがいなくなった時点で、この場所は私のいる場所じゃないってわかっていたから。
えみりみたいに、自分の居場所を必死で作ろうなんてしていないから。
中学3年生で学校が変わったえみりの方が大変だと思う。
女子なんて、よそ者はシャットアウトなんて話はよく聞くし。
……でも、えみりはかしこいから、そんな事は全然ないのかな。
そんな事、私が気にする事じゃないけどね。
私は彼女の顔も見ずに、部屋に入った。
「お父さんー。今度、みんなで遊園地行こうって言ってるんだけど、他に欲しい物もあってピンチなんだよね。だからちょっとだけお小遣いもらえないかな?」
ドアを閉める前、えみりの甘えたような声が聞こえて来た。
2階にいる私に聞こえるように、わざと大きな声で言っているんだと思う。



