仕事が忙しいと言って、お母さんが生きていた時も、亡くなってからも早い時間に家にいる事はなかったお父さん。
でも、再婚してからいつも夕飯の時間に間に合うように帰ってくる。
時計を見ると、7時半を少し過ぎたところ。
こんなに早く帰って来れるのなら、何で今までそうしてくれなかったんだろう。
一瞬だけ立ち止まったけれど、お父さんを睨んで私は2階へあがった。
ちょうどその時、自分の部屋から出て来たえみりと目があう。
「おかえりなさい、お姉ちゃん」
可愛らしい声で彼女はそう言うけれど、私はそれすら無視をする。
彼女には何の罪もないって、最初は思っていた。
……でも。
「……大変だね。居場所がないって」
背を向けた私に、えみりはクスクスと笑いながらそう言った。
えみりは、地味な嫌がらせをしてくる事が多い。
自分がやったとわからないような嫌がらせ。



