「結月ちゃん、どうしたの……?」


突然叫んだ私に驚いた様子のおばさん。

青信号に変わった時、リツの姿は消えていた。

車はまた静かに走り出して、さっきまであった重くのしかかるような空気がなくなっている。

リツがいたから助かった?

もしかして、死を覚悟した私に警告しにきたの?

……そんなわけがない。

リツは生きてるんだから、そんな幽霊みたいな事をするはずがないじゃない!


「結月ちゃん。今日はお父さん早く帰ってくるから家でゆっくり話し合いましょう。えみりも含めて4人で」


おばさんの声はさっきと違ってハッキリとしていた。

真っ直ぐに前を見つめるおばさんの表情に、私をあの世へ送る気は感じられなかった。


「……どうかしてる」


おばさんに聞こえないほど小さな声でつぶやいて、額に手をやった。

死を覚悟するなんて私らしくない。



雷雨が私を狂わせた。

全部、この雷雨のせい……。