覚悟を決めておばさんの次の言葉を待っていたら、赤信号でストップした。
ワイパーが一定の間隔で右に左に揺れる。
「今まで本当にごめんなさいね。結月ちゃんに言われるまで気が付かなかった」
おばさんの声と共にハンドルを握る手も震えている。
それって罪を犯す前の懺悔?
そんな前置きいらないからひと思いにやっちゃいなよ。
今さら死なんて怖くないから……。
「結月ちゃん、あの……」
「リツ……?!」
冷たい目でおばさんを見ていたら、目の前の横断歩道を渡っていた人が道路の真ん中で立ち止まるのが視界に入飛び込んできた。
こんな叩きつけるように激しく降る雨の中、傘もささずに。
黒い学生服姿の彼は、確かに車の中にいる私をまっすぐに見つめていたんだ。
悲しそうな目で……。
車内で叫んだところでリツに私の声が届くわけがなかった。