こんな雨じゃさすがにジャングルジムになんかのぼって、星空を待ってるなんてないよね……。
「……結月ちゃん」
暗く重くのしかかる空気の中、おばさんが静かに私の名を口にした。
運転しているせいもあるけれど前を向いたまま、しかも焦点が合わないようなぼんやりとした声に少し恐怖を感じてしまう。
助手席の後ろに座っていたから、斜めの角度でおばさんの表情は見えそうなんだけど、この天候のせいで車内が暗すぎてよく見えない。
おばさんが家に来た日から今までずっと、反抗的な態度でおばさんの言う事は耳に入れようとしなかった。
もしかして、それの仕返しで悪天候を理由にこのままどこかに突っ込んでいくんじゃないかって。
……そんなわけないよね。
再婚相手であるお父さんと、最愛の娘のえみりを残して逝くなんてバカな事は絶対ない。
それとも私だけ事故に見せかけてあの世へ送る?
それでもいいよ、お母さんに会わせてくれるというのなら。