そしてハンドタオルから彼が手を離す。
「ごめん。先に行くよ」
手を上げて爽やかに笑う川上君は、人ごみに吸い込まれるように消えて行った。
急にどうしたのかと思わず首をかしげてしまう。
一緒に行かなくて済んだから私としてはホッとしたけれど。
人の流れに乗って、私もホームへの階段をおりる。
何の変化もない朝の風景。
この風景をあと何回見れば、変わっていくんだろう?
私が大事にしているのは、学校が終わってからジャングルジムの上でリツと一緒に過ごす時間だけ。
あの時間だけはずっとずっと変わらないで欲しい。
君がいるから私は今、ここに立っていられるのだから。
「……」
リツのひんやりとした唇を思い出して、身震いしてしまった。
あの場所に行けばリツに会える事が当たり前に思っていたけれど、胸騒ぎがおさまらない。



