「藤村。これも返すよ」
慌てたように私の後を追いかけて来た川上君。
私に追いついて、持っていたハンドタオルを差し出して来た。
突然の大雨で強引に私の傘に入って来たあの日、川上君に返さなくていいと言って渡したハンドタオルだった。
「あの日も病院に行くところでさ。傘に入れてくれて本当に助かったよ」
「……そう」
なんて自分勝手な人なんだろうってあの日は思ったけれど、病院に行くところだったのなら仕方がない。
こんな私でも役に立ったのなら良かった。
ハンドタオルを受け取ろうとつかんだけれど、川上君の手は離れない。
何事かと思い見上げると、彼は悲しそうな顔をしていた。
視線の先は私ではなく、ハンドタオル。
さっきまでキラキラしていた目が深い悲しみの色が覆われていく。
「川上君……?」
「あ、ごめん。気が緩んでボーっとしただけ」
声をかけると、川上君がハッと我に返ったように慌てて笑顔を作った。



