「親には絶対に言わないで。学校にも……」
えみりがクルッと振り返って必死な顔でそう言って来た。
今にも消えそうな声。
こんな風にお願いされるのは初めて。
それ以上に、まともに会話する事すら初めてかも。
返事もせずに私は歯を磨いて口をゆすいだ後、タオルで口元を拭きながらえみりをチラッと見た。
唇を震わせて、泣き出しそうな顔をしている。
「うちのお金が好き勝手に使われてんのに、何で黙ってなきゃいけないの?」
「だって、カッコ悪いじゃん!お金を巻き上げられてただなんて……」
えみりもお父さんと同じで大事なのは体裁。
ウソをついてお父さんからお小遣いをもらっていたから、その事について怒られるのも嫌なのかもしれない。
あまりにバカバカしくてフンッと鼻で笑ってしまった。
「カッコ悪いで済まされる事じゃないでしょ?コレ、犯罪だよ?」
「……でも」
「ウソで固めた世界で生きてて楽しい?そんなにその世界を守りたいの?」
私の言葉にえみりは口をつぐんでしまった。



