「約束したからな。無理しないで少しずつでいい。人生一度きりなんだから闇の中を歩いててもつまんないじゃん?」

「そうだけど……」

「せっかく生きているんだから、いつも笑ってないともったいない。自分の人生くらい満開の花道歩いてった方がいいだろ?」


そう言ってリツは私を引き寄せて、そっと頬にキスをした。

それはほんの一瞬の出来事で。

リツの唇がかなり冷たくて、緊張と共に私の心臓が止まってしまうくらい驚いてしまった。


「リツ……大丈夫?手もそうだけど、唇も冷たい。顔色だって悪いままじゃん。どこか具合悪いんじゃないの?」


寒いからずっとフードをかぶったままでいるとか……?

心配になって私はリツをギュッと強く抱きしめた。

少しでも暖かくなればいいと思ったから。


「オレは大丈夫。まだ大丈夫だから」


つぶやくように言ったリツの言葉に気をとられて、私たちの頭上を星が流れていった事には気が付かなかった。