お父さんの分も作っておいたけれど、食べてくれたのかどうかまではわからない。
時々、手紙を置いたりしていたけれど返事がくる事は一度もなかった。
家族の事より仕事を優先していたあの人は、一体何のためにお母さんと家族になったんだろう。
「そろそろ帰ろうぜ!」
「おう、また明日な!」
ゲームをしていた小学生も大きく手を振りあって、それぞれの家に帰っていく。
オレンジ色に染まっていた空は、いつしか夜の色へと変わり始めている。
キラキラと輝く星まで散らばり始めた。
「……」
私は無言のまま、地を蹴ってブランコをこいだ。
高い場所までこいでも、空の星には手は届かない。
お母さんのいる場所まで届くはずがない……。
『おかえり、結月』
あの家に帰っても、そう言って出迎えてくれるお母さんはいない。



